東京2020大会内科領域の症例分析と対応の検討


はじめに 

この文書は、研究課題名「東京2020大会内科領域の症例分析と対応の検討」の研究において、既存試料・情報を利用することをお知らせするための説明文書です。わからないことや、心配なこと、疑問に思ったことなどがありましたら、どんなことでも遠慮なく説明者である研究責任者にお尋ねください。

 

説明者・研究責任者

所属 筑波大学 体育系 准教授

氏名 渡部 厚一

連絡先 029-853-5902

 

1 研究課題名

この研究の研究課題名は、「東京2020大会内科領域の症例分析と対応の検討」です。

この研究は、筑波大学体育系研究倫理委員会の審査を経て、筑波大学体育系長の許可を受けて実施しています。

 

2 研究の背景 

オリンピック大会などのスポーツメガイベントでは、全世界から10000人を超えるトップアスリートが集結して競技が行われます。このため、大会期間中のスポーツ活動に伴う傷害や疾病の調査は、スポーツ特有の疾患を把握するための有用な情報となりえますが、系統的な調査が行われるようになったのは2008年の北京大会以降です。

 また東京2020大会は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により大会が1年延期となり、毎日の感染症スクリーニング検査など、安全に競技が行われるための様々な感染対策が行われつつ、世界的なパンデミック下で開催された初めてのスポーツメガイベントであり、今後のスポーツ活動における感染対策の在り方を示すものとなっています。

 

3 研究の目的及び意義 

東京2020オリンピック大会及びパラリンピック大会期に選手村や試合会場で発生した事例について、医療記録のうち内科症例と新型コロナウイルス感染症対策としてのPCR検査記録を分析することにより、今後の大会開催に向けた提案を行うことを目的とします。新型コロナウイルス感染症関連のデータ分析は、パンデミック下におけるスポーツイベント開催のための感染対策を、また、熱中症事例の分析は、開催の問題点に挙げられていた暑熱環境下でのスポーツイベント開催の可能性を、オリンピック大会及びパラリンピック大会における内科的疾患の特徴と傾向の分析は、スポーツ競技種目別の疾患発生の特徴を明らかにする意義があります。

 

4 予想される研究上の貢献・期待される利益 

オリンピック大会、パラリンピック大会は、地球最大規模の総合スポーツ大会であり、メガイベントです。そこで発生した医学的事例の分析は、競技スポーツの医学において大変貴重です。また、COVID-19に関する資料の分析は、パンデミック下におけるスポーツイベント開催方法に対する重要な知見となり、東京2020大会のレガシーともなります。

 

5 研究実施期間及び試料・情報等の保存期間

この研究は、2026年10月31日まで実施する予定です。

研究期間終了後、2036年10月31日まで、取得した情報を保存します。

 

6 研究実施場所及び研究実施体制

(1)共同研究の有無 

この研究は、筑波大学体育系において単独で実施する研究です。

(2)研究実施場所

データ・情報等分析場所:総合研究棟D607号室(渡部厚一研究室)

試料・情報等保管場所:総合研究棟D607号室(渡部厚一研究室)

(3)組織 

研究組織は、別紙の通りです。

 

7 研究対象者 

対象となるデータは、東京2020大会の参加者として東京2020大会組織委員会により登録されたもののうち、内科的疾患に罹患し電子カルテシステムに登録されたもの約600例、およびCOVID-19スクリーニング検査を提出したもの数万人のCOVID-19検査データです。データを管理する東京2020大会組織委員会により研究利用についてはあらかじめインフォームド・コンセントの手続きが取られており、組織委員会が研究対象となるデータを抽出して匿名化されたデータを提供したのちに、分析検討します。

 

8 実施内容 

(1)実施方法の説明

東京2020大会参加選手や役員を含む大会組織委員会登録者のCOVID-19に関する検査データや内科的受診者の医療記録より、大会組織委員会の許可を得て抽出された匿名化データを用いて、以下について検討します。

① 内科外来受診者の分析(非アスリート含む検査数や処方数、治療内容等の分析)

② COVID-19陽性例の特徴とスクリーニング及びフォローアップシステム

③ 発熱外来の運用と発熱外来受診者系統別(空港、スクリーニング、有症状、トリアージ、その他)分析

④ 発熱外来と濃厚接触者検査エリアにおけるPCR検査結果の分析と比較

⑤ 感染症サーベイランスとトリアージシステムの意義の考察

⑥ 選手村熱中症症例の分析

⑦ 皮膚科外来受診者の分析(非アスリート含む検査数や処方数、治療内容等の分析)

また、これらをオリンピック大会とパラリンピック大会で比較します。

(2)情報の提供を受けるための手続

 ① どこから提供を受けるか

東京2020大会組織委員会

 ② どのような目的で既存試料・情報とされたものか

 診療及び感染対策目的

 ③ 提供を受ける試料・情報は何か(個人が識別される情報を含むか否か)

 電子カルテ情報:国籍、年齢、性、入国日、競技種目、予防接種歴、アレルギー歴、現病歴、評価・診断、対応

検査情報:血液、尿、COVID-19抗原定量・PCR検査、心電図、呼吸機能

画像情報:X線、MRI、超音波

薬剤処方・処置内容

 ④ 提供を受けるためにどのような手続をとるか

 ア 提供を受けるための自機関での手続の内容

 「承諾を得るための説明書」を東京2020大会組織委員会内の、Tokyo2020 医学研究調整運営委員会に提出し、東京2020大会組織委員会の承諾を得てデータの提供を受けます。オプトアウトとして、「研究についての説明」を英語版及び日本語版で研究責任者のホームページで公開します。

 イ 提供を受けるための提供元機関での手続の内容

Tokyo2020大会では、大会参加時に国際オリンピック委員会及び国際パラリンピック委員会により、参加者本人、未成年の場合には参加者本人及び親権者、また代諾者が必要な場合には親権者または法定代理人に対して、今回提供を受ける情報についての他機関への提供に関する文書による説明と同意の手続きが行われています。

Tokyo2020 医学研究調整運営委員会にて、同意が得られている情報のうち、研究内容に該当する必要な医療情報を抽出し匿名化されたデータの提供を受けます。研究代表者所属施設における倫理委員会の承認内容について、運営委員会事務局と共有しつつ、倫理手続きが完了次第、組織委員会からの研究データの引き渡しを調整します。データは、原則、対応のある匿名化された情報での引き渡しとし、対応表は組織委員会で管理します。

9 研究における倫理的配慮

(1)研究の対象となる個人の人権擁護(①個人情報の管理、②個人情報の保管、③個人情報の破棄、④個人情報の開示等、⑤プライバシーの保護) 

①個人情報の管理

・ 研究対象者への説明書や解析するデータには、個人の名前・住所等の個人情報は含みません。また、具体的な個人識別情報は取得しませんが、得られた情報から個人が識別できる可能性がありますので、研究成果の発表時には、識別できないようさらに配慮いたします。

・ 入手した個人情報等は、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律、その他の法令を遵守し、また、研究対象者から同意を得られた範囲内で取り扱います。

②個人情報の保管

・ 収集した匿名化データは、USBメモリにパスワードを設定して保存し、侵入対策及びウイルス防御対策を施したPCを用いて解析し、研究責任者以外はアクセスできないようにします。

・ 研究の実施に伴って取得された個人情報等の漏えい、滅失またはき損の防止その他の安全管理のために適切な取り扱いを行います。

・ 収集したデータを保存するUSBメモリは、総合研究棟D607号室(渡部厚一研究室)に設置した鍵のかかるロッカーに施錠して保管します。

③個人情報の破棄

・ 電子データは、保存期間満了時に完全に消去します。

④個人情報の開示等

・ 研究結果を学会発表および論文発表で公開します。

・ 研究結果を公開する際には、研究対象者個人を特定できる個人情報等を開示しません。

・ 個人を復元できないように匿名化されたデータは個人が特定できないため、匿名化後に研究への同意撤回がなされても、該当する者のデータを取り除いたり修正したりすることができません。ただし、具体的な個人識別情報は取得しませんが、得られた情報から個人が識別できる可能性も否定はできないため、個人から申し出があり、それを個人と特定しえた場合には開示をおこないます。

・ 研究対象者等及びその関係者からの相談に対して問い合わせ先を通知して対応します。

⑤プライバシーの保護

・ 研究で取得した個人の映像・肖像は、研究結果を公表する際には、個人が識別できないように画像処理して使用します。

(2)研究の対象となる個人に理解を求め同意を得る方法(インフォームド・コンセント等)

・ Tokyo2020大会では、大会参加時に国際オリンピック委員会及び国際パラリンピック委員会により、参加者本人、未成年の場合には参加者本人及び親権者、また代諾者が必要な場合には親権者または法定代理人に対して、今回提供を受ける情報についての他機関への提供に関する文書による説明と同意の手続きが行われています。

・  Tokyo2020 医学研究調整運営委員会が、同意が得られた情報のうち、研究内容に該当する必要な医療情報を抽出して、匿名化したデータの提供を受けます。研究代表者所属施設における倫理委員会の承認内容について、運営委員会事務局と共有しつつ、倫理手続きが完了次第、組織委員会からの研究データの引き渡しを受けます。データは、原則、対応のある匿名化された情報での引き渡しとし、対応表は組織委員会で管理します。これにより、研究対象者が不利益な取扱いを受けることはありません。

・ オプトアウトとして、「研究についての説明」を英語版及び日本語版で研究責任者のホームページで公開します。

(3)研究によって生ずる個人への不利益及び危険性に対する配慮 

・ 個人を識別できないように匿名化されたデータで解析を行いますが、対象がオリンピック・パラリンピック出場選手である場合には、データの性質上、特定される可能性が否定できないため、特定ができないよう、データの公表方法に更なる十分な配慮を行います。

 

10 緊急時対応及び被害の補償 

(1)緊急時対応と中止基準

 該当しません。

(2)被害の補償

補償の措置は講じておりません。

 

11 研究資金 

この研究は、教育研究経費によって実施しています。

 

12 利益相反(共同研究先の企業・団体等との関係を含む) 

この研究組織には、利益相反事項に該当する者はおりません。

 

13 研究結果の公開

この研究の結果は、論文発表および学会発表で公開します。

研究結果を公開する際には、研究対象者を特定できる個人情報の開示はいたしません。

 

14 その他 

 なし

 

15 問い合わせ先

この研究は筑波大学体育系研究倫理委員会の承認を得て、対象者の皆様に不利益がないよう万全の注意を払って行われています。研究への協力に際してご意見ご質問などございましたら、気軽に説明者である研究責任者にお尋ねください。あるいは、体育系研究倫理委員会までご相談ください。

 

【問い合わせ先】 

所属:体育系        職名:准教授      氏名:渡部 厚一

電話番号:029-853-5902   E-mail:watanabe.koichi.ga@u.tsukuba.ac.jp

【筑波大学 体育芸術エリア支援室研究支援】

電話番号:029-853-2571   E-mail : tg-kenkyurinri@un.tsukuba.ac.jp